みなさん、こんにちは。
育休を2回取得した2児のパパ 一ノ瀬です。
一ノ瀬さんの過去記事:男性育休の過ごし方、パパにできることは?<育児・家事・ママのフォローについて>
2022年4月に育児・介護休業法が改正されます。男性育休を取得しやすい雇用環境の整備が進んでいくと期待していますが、それを待つだけでは変わらない可能性もあります。
今回は、私も制作メンバーとして加わった「ペア休」をについてご紹介いたします。
目次
1.「ペア休」とは
ペア休とは、「私たちは『ペア休』という選択。」という男性の育休を応援する動画を展開する、有志プロジェクトです。
ショートムービーのドラマ仕立てで、わずか13分と短いのでコーヒーを飲みながら、ビールを飲みながら、ちょっとした休息タイムにご覧いただけます。
2021年5月にリリースしましたところ、NHK(https://bit.ly/3uTXn76)や朝日新聞(https://www.asahi.com/articles/ASP662J83P62ULFA027.html)のWEBニュース版で記事になりました。また、NHK「朝イチ」でもご紹介いただき、ゲストで出演されていた永作博美さんは、夫婦でペア休を取り、大変な子育てを一緒に乗り切れたらどんなに心強いだろう、とコメントしてくださいました。
2.ペア休をつくった背景
男性が育休を取りづらい日本、理由の上位に必ず入る「職場の雰囲気(空気)」
日本の男性育休取得率は、2019年の7.48%から2020年は12.65%と大きく伸びました。おそらく今後も伸びていくでしょう。しかし、まだまだ育休を取りやすいとはいいづらい日本。
各種アンケート調査では、取りづらい上位は大体次の3つです。
「制度がない」「収入の心配」「取りやすい雰囲気でない」
・制度がない?
いえいえ、日本は他国と比べても制度は充実しており、そして法律では労働者の権利として定められていますので、すべての職場で男性も育休を取得することができます。
・収入の心配?
確かに育休中はお給料が出ません。しかしご存じの通り、育児休業給付金として最初の半年間は給与の67%が支給され、また会社も従業員も社会保険料が免除になりますので、実質、給与の8割以上が保証される計算になります。
では残るは、職場の雰囲気(空気)です。
ここが大きな課題です。上司がはっきりと“育休は取らせない”とまでは言わなくても、「人員に余裕がないからな」「私の時は妻がひとりでやったけれどな」など間接的に拒否する言葉や、日ごろから長期休暇を取りづらい雰囲気など男性が育休を取りづらい職場もまだ多いのではないでしょうか。
男性育休100%を掲げている企業もありますが、まだまだ一部です。
【インタビュー】男性育休を職場で初めて取得した本音と不安男性育休を取得しやすい社会にしたいと一人の呼びかけから有志で集まった
「ペア休」は、キャリアコンサルタントの境野今日子さんの呼びかけからはじまりました。
境野さんが子どもを授かり、夫が育休を取りたいと上司に申し出たところ、(上司の家庭は妻一人で育児を担ってきたことから)「育児は一人でもできる」「君がいない間の仕事はどうするんだ」など様々な言葉で諦めさせようとしてきました。
人事も取得の手続きについて事務的に説明するだけで上司との間に入った対応はしてくれませんでした。境野さんご夫婦は、ユニオンや労基署に相談しながらなんとか育休を取ることができましたが、その後も上司の対応は変わらないどころか、育休を取った報復がささやかれるようになり、復職後半年を過ぎたところで転職を決意しました。
なぜ「申請すれば取ることが出来る」はずの育休取得でこんなに辛い思いをしなくてはいけないのか(※育児休業の拒否は違法です)、夫婦で子どもを育てるという当たり前のことがなぜ実現しないのか。
このような悔しさに近い疑問持ち、苦しんでいる人がたくさんいるはず。
育休を取りたい男性が、気兼ねなく取れる社会にしたい、そんな思いから呼びかけたところ、全国から有志メンバーが集まり、動画制作がスタートしました。
3.「ペア休」動画制作でこだわったこと
リアル
私たちがまずこだわったのはリアルさです。動画に出てくる産後の母親の様子について、「ちょっとオーバーでは?」と感じるかもしれませんが、ご覧いただいた子育て中の女性からは、「まるで自分を見ているよう」「当時を思い出して泣きそうになった」といったコメントが寄せられました。
オフィスシーンは、協力を名乗りでてくださった企業様のオフィスをお借りし、有志メンバーの他にエキストラの方々も参加し、ほぼ演技未経験のメンバーで撮影を行いました。そして上司、部下、同僚などそれぞれの立場に立って実際にあるよね、というリアルさを大切にしました。
また、より説得力を持たせるために、現状を物語る具体的な数字を入れました。数あるデータの中で、どれを出すか、どう出すか、どこで出すかは、メンバーでも議論を重ねて決めました。
動画を通して、育休がとれなかった男性の家庭に起きていることと、その先に考えられる産後うつなどのリスクについて、より身近に感じていただきながら、訴えかけていきたいと思っています。
育児に限らず皆の人生を大切にする
実はこの問題は育児だけではありません。例えば、高齢化が進む日本では、介護に直面する従業員も増えています。「私生活は職場に持ち込むな」、「ライフイベントに直面したら仕事は諦めろ」、では辛い思いをする人が増えていきます。もちろん、ライフイベントだけでなく趣味や自己研鑽、リラックスタイムなど人によって大切なものは様々。お互い様の気持ちで助け合う社会になってほしいです。わずか13分の動画ではありますが、そのようなところも大切にしていきたいと考えて制作しました。
4.ペア休動画で実現したいこと
私たちに出来ること
「ペア休」は、男性育休を取りやすい社会になってほしい、そのために男性の育休取得を応援したい “第三者”の方々に向けて、「自分たちに出来ることってなんだろう」、という問いかけについて考えていただけるような動画を目指しました。
第三者にも出来ることがあるよね、私たち一人一人のアクションで社会を変えていくことができるよね、というメッセージの動画です。動画では、以下のアクションを提案させていただきました。
「産後の大変さを聞こえるように言ってみる」
産後は、骨盤がぐらぐらになったり、腰痛になったり、ホルモンバランスが崩れて肌荒れや髪の毛が毎日たくさん抜けたり、暫くは心身共に不安定な状況になりますが、男性はその大変さをよく理解していないかもしれません。
例えば、「尿漏れが大変なんだよね~」など、男性からすると少し驚くような発言を、出産を経験した人が何気なく、でも聞こえるように、言ってみるのもよいかもしれません。
産後は“大変”なことは男性もわかっていますが、“大変”の内容を具体的に伝えることで、周囲の理解が進みます。
「やれる業務があったら代わりに名乗り出てみる」
職場で誰かが育休を取得したいと申し出た時、もし上司の反応があまりよくなかったとしても、同僚たちが「休んでいる間の仕事はみんなで引き継ぐよ」「こういうのはお互い様だよね」などの声掛けがあったら、育休をとる男性はどれだけ勇気づけられるでしょうか。
育休取得者の仕事の引継ぎについては、多くの職場では部署やチームの中で何とかすることになるでしょう。つまり大企業でも中小企業でも同じです。
私は数年前から中小企業の男性育休取得に関する相談も受けていますが、引継ぎや権限移譲など進めながらどの職場も取得できています。
企業規模に拘らず、職場で育休取得者を希望する同僚がいる時には、ぜひ声に出して、そして行動で応援してあげてくださいね。
「気軽に言える関係なら直接言ってみる」
男性育休を推奨している管理職は、もし他の部署で育休を取りづらい思いをしている若手男性がいたら、その上司にも声掛けをお願いしたいです。同期や同じ役職の人から言われたら、心動くかもしれません。それぞれの立場で出来ることを考え、アクションに起こしていくことが大切と考えています。
もちろん他にもアクションはあるでしょう。”私たちが出来ること” を考え、アクションを起こし、上手くいったことをどんどん発信(共有)していただけると嬉しいです。
5.さいごに
まずは「ペア休」動画をご覧ください。
そして、もし、いいと感じていただけたら、配偶者、友人、職場などに紹介して、広めていただけると嬉しいです。
「ペア休」動画はそれだけで何かを解決できるわけではありません。
ただ、ペア休のような媒体を使うことで、男性の育休について話すキッカケが生まれます。そして動画を見ながら話すことで客観的、冷静に今の状況を振り返り、これからについて話し合うことが出来ると思うのです。
ご家庭や、友人同士で、そして職場で、多くの方とご覧いただいて、それぞれが小さなアクションを起こし、男性育休を取りたい方が、気兼ねなく取れる社会に一緒にしていきましょう。
*ペア休は職場、自治体、コミュニティなどの研修やワークショップなどで自由にご利用いただけます。社内掲示板で紹介して、全従業員が自由に見ることができるようにしている企業もございます。
ご利用の際は、下記ペア休ホームページ内の事務局メールへ、利用します、とひと言ご連絡ください。
「私たちはペア休という選択。」
ペア休ホームページ ペア休 (peraichi.com)
*ここでは育児休業を育休としています
この記事のライター:一之瀬さちお
男性育休を取りやすい組織つくりを支援。私生活でも地域のパパ講座講師など子育て支援活動中。男性育休をとりやすい社会に向けた「ペア休」動画制作メンバー。