子育てをしている人なら一度は悩むであろう「小一の壁」。
「周りから小学校にあがると大変だと聞く」「子どものメンタルが心配」などさまざまな問題が起きます。子どもによって変化する部分に個人差はありますが、何かと備えておいたほうがいいでしょう。
今回は、18年勤めた会社を小一の壁に備えて退職したももさんにお話を伺います。退職してから感じたメリット・デメリットや、仕事面や子育て面で備えておいたほうがいいことをお聞きしました。
小一の壁に悩まされている、これから体験する、キャリアを諦めたくない人に本記事が参考になるでしょう。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
ももさんのプロフィール
居住地:埼玉県
年齢:41歳
家族構成:夫(39歳)、息子(小学二年生)、娘(年少)
職歴:新卒で建築業界の某メーカーに入社。営業事務4年、法人営業14年、計18年勤務するも、時短勤務の終了と小一の壁が重なり退職(2020年3月)。
その後1年の専業主婦期間中に国家資格キャリアコンサルタントを取得。
現在はパラレルワーク(パート+副業ミートキャリアでのキャリアカウンセリング+ボランティアmog)をしています。時短正社員+フルリモートという条件で転職活動をしていましたが、無事内定をいただき2022年3月に再就職予定です。
産休育休を経て復帰しても時短勤務の延長ができずに退職を決意
新卒から18年も勤めて退職を決意。苦渋の決断だったと思います。その背景にはさまざまな要因が重なっていました。一体何があったのでしょうか。保育園と小学校の違いや退職に至った経緯を伺いました。
──長年勤めていた会社で産休育休の取得経験がありますよね。復帰されたそうですが小一の壁で退職。保育園との違いは何だったのでしょうか。
産休育休は取りやすい会社でした。ただ時短勤務が3歳未満までしか取れず、フレックスタイムやリモートワークもできない会社だったので、子育てしながら働き続けるのは難しいなと感じていました。下の子が3歳になる(=時短終了)のと、上の子が入学するタイミングが重なったことで退職をしました。
保育園との違いで懸念していたのは、帰宅後のタスク量と就寝時間、長期休みがあることですね。保育園の間は身の回りのお世話がメインなので、帰宅後はご飯・お風呂・寝かしつけだけで良かったのですが、小学生になるとこれに加えて宿題に関連したタスク(見守る・丸つけをする・音読を聞く等)が追加されます。時短&園児でも帰宅後は怒涛の忙しさなのに、フルタイム&小学生になったら我が家はもう回らないと思いました。
あとは近所の小学生のママさんが「小学生になったら就寝時間を早めないと朝起きられない」と口を揃えて言っていたことや、尊敬するベテラン保育士さんから「小一は環境の変化がとても大きくて、親が思っている以上に疲れるしストレスも抱えやすい」と聞いていたことも大きいですね。保育園は親が送迎しますが、小学校は重いランドセルを背負って自分の足で登下校するので、実際すごく疲れるようです。保育園とは全く違った慣れない環境で1日頑張っているわけですしね。息子も、入学後数ヶ月は夕飯前に寝てしまうことが多々ありました。就寝時間は園児の時より1~2時間早めています。この生活リズムにするためには例え時短であっても無理だったので、退職するしかなかったという感じです。
長期休みに関しては、学童に預ければそれで済む話ではあるのですが…‟小学1年生の夏休み”は一生に一度。せっかくの夏休みを1日中学童で過ごすのは可哀想だな、一緒に過ごしたいなと思ったのもきっかけの1つです。
──退職しようと決意した決定的な事柄は何ですか?
特に決定的な出来事があったわけではありませんが、時短勤務ができないのであれば退職すると数年前から決めていました。とはいえ仕事も会社も好きで出来れば続けたいと思っていたので、息子の妊娠中から時短延長希望を出していました。
毎年の人事面談で制度改定希望を伝え、所属部署のトップも人事部に直接交渉してくれていたのですが「特例は作れない」の一点張りで。この先も制度を変えるつもりはないのだな、辞めるしかないなと思ったのが退職半年前のことでした。
ただ、黙って辞めるのは悔しいし、残された社員のためにも何か出来ないかなと思い、退職の3ヶ月前に社内のワーママ全員にアンケート調査を実施。その結果を元に役員に直談判しましたが、それでも希望が通らず退職を決意しました。
フルタイムになると子どもより早く家を出ないといけないし、学童のお迎えにも間に合わないんです。両実家とも遠方で親を頼ることはできず、かといってシッターさんに子どもをお願いしてまで仕事を続けようとは思えなかったというのも大きいですね。赤ちゃんのお世話でなく意思のある小学生なので、他人にお任せするのは違うなと。自分がしっかり関わりたいし、帰宅後の親子の時間を大切にしたいと思いました。
小一の壁に備えて退職してから気づいたメリット・デメリット
親子の時間を大切にしようと小学校入学前に長年勤めた会社を退職。ずっと働いてきたからこそ感じる退職へのメリットデメリットがあると思います。具体的に、ももさんから当時の心境をお聞きしました。
──実際に退職してよかったと思うことはありましたか?
月並みですが、帰宅した子どもに「おかえり」といえること、子どもの話を余裕をもって聞いてあげられることですね。帰宅したときの表情や声から本人の状態がわかるし、その日の出来事をゆっくり聞く余裕があることが嬉しいなと。
保育園のときは、送迎時に先生からその日の様子を聞くことができますが、小学生になると本人から聞くしかないんですよね。前職のまま働き続けていたらゆっくり話を聞く余裕なんてなかったと思うので、その点は退職したからこそ叶えられたことだなと思います。
入学から数ヶ月は下校時間に合わせて途中まで迎えに行くこともあったのですが、ランドセルを揺らして笑顔で走ってくる息子の顔を見て泣きそうになったこともあります。私はこういうことがしたかったんだと。
一緒におやつを食べながら学校での出来事を聞いたり、田んぼでおたまじゃくし取りをする様子を見守ったり、子ども同士の曖昧な約束を見守るために公園まで一緒に行ったり…。これまでの数年間は毎日とにかく忙しく余裕のない日々だったので、こういうゆったりとした時間を過ごせる幸せを噛みしめていましたね。
あとは、下の子の転園にゆっくり寄り添えたのもよかったです。コロナ禍で転職活動ができず、保育園からこども園に転園したんです。環境の変化に敏感な子なので、短時間からゆっくり慣らしていけたのは本人のためにも私の精神衛生上もすごくよかったなと思っています。
──月並みの幸せでも充分ですよね。退職して感じたデメリットもあれば教えてください。
デメリットは、自分の収入がなくなったことで「このままでいいのかな」という不安が拭えなかったことです。家計面はキャッシュフロー表を何パターンも作ってシミュレーションし、退職しても問題がないことはわかっていたんですけどね。新卒からずっと働き続けてきて収入がないという状態が初めてだったので、漠然とした不安というか喪失感みたいなものはどうしても感じてしまいましたね。
これまでのキャリアが途切れる…という思いは全くなかったといえば嘘になりますが、それよりも「もう充分頑張った・やり切った・少し休みたい」という気持ちの方が強かったです。これから先は余生、といったら大袈裟ですけど正社員で働くのはもういいかなと。40歳だし、一度退職したら正社員はもう無理だろうという諦めのような気持ちもあったと思います(実際はそんなことないのですが)。ただ働くこと自体は好きなので、子どもを優先しながら柔軟に働ける仕事があればいいなとは思っていました。
小一の壁をきっかけに気づいた対策法や働き方
小一の壁を経験したからこそわかる備えておくべきこと。
「大変」の一言では小一の壁にどう立ち向かえばいいのかわからないですよね。
ももさんから具体的なアドバイスをいただいております。ぜひ小一の壁の準備として参考にしてください。
もうひとつ、現在の働き方についてもお聞きしています。
仕事が好きなももさんは退職後も働くことを諦めていませんでした。
自身と子どもにとってベストな働き方を模索する日々を送り、結果的にパラレルワークの道を選んだそうです。
今もなお挑戦し続けるももさんに今の活動内容を伺いました。
──小一の壁を経験したももさんにお聞きします。対策しておいたほうがいいと思ったことはありますか?
・近所の小学生の親御さんから情報収集しておくことをおすすめします。登下校時刻、学童の利用者率、宿題の量や親の関わりがどれくらい必要か、PTAの活動量など地域によってさまざまなので、事前にある程度把握できていると対策しやすいと思います。
・小一の壁に備えて時短の延長やリモートワークなどの制度交渉を考えている方がいらしたら、とにかく早めに動くことをおすすめします。私は制度交渉の結果を待っていたこともあり、退職の2カ月前まで最終的な決断ができませんでしたがそれでは正直遅すぎたので…。
──正社員ではなくパート勤務を選んだ理由をお伺いしてもよろしいでしょうか。
キャリアコンサルタントの資格試験が終了した翌月からパートを開始したのですが、パートにしたのは小学生の下校時刻には家に居たかったからですね。15時には在宅している仕事となると、正社員の案件はありませんでした。
──専業主婦になってからキャリアコンサルタントの資格取得を目指したきっかけは何ですか?
退職の決断に迷いはなかったものの、フルタイムで働けないだけでなぜ好きな仕事を諦めなければいけないのかという悔しさや、柔軟性のない会社の制度に対する憤りを抱えていました。働く意欲があって、結果を出せるスキルもあるのになぜ?と。
柔軟な働き方を調べている中でミートキャリアを知り、代表の喜多村さんのnoteにたどりつきました。ミートキャリアが掲げるビジョンがまさに私が叶えたいことそのもので、心から共感し、なんて素晴らしい事業なんだと胸が熱くなったんです。キャリアカウンセラーという仕事にも興味がわいて、すごくワクワクしたんですよね。自分と同じような葛藤を抱えたワーキングマザーの支援をしたい!誰もが柔軟に働ける社会にしたい!と思いました。
人材業界で働いたことのない私がキャリア支援をするには、基礎から学ぶ必要があると考え、キャリアコンサルタントの資格取得を目指すことに決めました。実務経験がない場合は養成講座を受講する必要があったので、私はリカレントという養成講座に約半年間(週2回)通って受験資格を得てから受験しました。
──資格取得後に新たに始められたことはありますか?
・ミートキャリアのキャリアカウンセラー養成講座を受講
・個人でキャリアカウンセリングサービス開始
・副業開始(ミートキャリアのキャリアサポーター)
・ママボランのキャリアデザインプログラム受講
・mog(ママ、お仕事がんばって!)でボランティア開始
・転職活動(2022年3月より時短正社員として再就職決定しました)
ももさんから小一の壁に不安を抱く人たちへのメッセージ
小一の壁の何が不安かって、他人の経験談をいくら聞いたところでそれが我が子にも当てはまるとは限らないし、結局のところ実際に入学してみないとどうなるのかはわからないということなのかなと思います。
それでも参考にしたいから情報収集をしますよね。たくさんの情報に踊らされないためには、まず「自分がどのように子どもに関わりたいのか」を明確にしておくと良いと思います。そうすると、他人の経験談が良い判断軸になります。
他人の価値観に触れることで、「私もそんな関わり方をしたいな」「私はそうしたくないな」「ここには共感するけどこっちは何か違うなぁ」と、自分の大切にしたいことが明確になってくると思います。
私も実際<小一の壁/乗り越え方>、<小一の壁/退職/後悔>、といったキーワードで毎日血眼になって情報収集していましたが、さまざまな方の事例を目にしたことで自分がどうしたいのかがハッキリしました。あとは自分の決めた選択を信じてあげることかなと思います。皆さんが、その時々でベストな選択ができますよう応援しております!悩んだときはご相談くださいね。
さいごに
今となってはパートと副業を掛け持ちするパラレルワーカーのももさんですが、ここまで至るのに悔しい思いもたくさん経験しています。子どもと自身にとってベストな働き方を見つけたももさんはとてもイキイキしているように感じました。
小一の壁に備えたり悩んだりして退職しようか迷われる人は多いかと思います。どのような選択をしても、自分で決断した選択であればそれが正解だと思います。
もし1人で答えを見出せない場合は、一緒に解決策を見つけてくれる家族や知人などに相談しましょう。キャリアコンサルタントとしても活動しているももさんなら、解決策を一緒に考えてくれるでしょう。
ももさん、インタビューを受けていただきありがとうございました。
この記事のライター:もふぃ
関西在住。夜勤旦那を支えながら1人息子を育てる主婦です。住宅リフォームの営業経験を活かして住宅系ライターとしても活動中。充実した在宅育児を送っています!
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