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【ワンオペ育児の育休中に裁判員裁判を受けた意味】ワンオペ育児での夫との関係や課題についても伺いました

ワンオペ育児は、現代の子育ての一つのスタイルとして定着してきました。

ワンオペレーションで育児を担当するのがパパでもママでも、その大変さは変わりません。

今回お話を伺ったなべみさんは、自身も帝王切開からのワンオペ育児を経験しながら、同じくワンオペ育児が発端の一部となった事件の裁判員裁判を担当しました。

「その経験からなにを得たのか」「なべみさんが伝えたい事はなんなのか?」を、インタビューさせてもらいました。

なべみさんのプロフィール

なべみさんとパートナー(旦那様)の年齢:アラサー
なべみさんご夫婦のご職業:教員
現在、大阪府茨木市在住

帝王切開での出産とパートナーからの手紙

出産の際に帝王切開だったなべみさん、その時に旦那様からお手紙をもらったそう。
大変だった出産当時の状況や、お手紙の事についてお話してもらいました。

ーー出産までに体調の変化や入院などはあったのでしょうか?

予定日2週間目の定期検診で「妊娠高血圧腎症」と診断され、そのまま入院を指示されました。

ドクターから「お母さん、このまま出産したら死にます」とストレートに言われてしまったので夫は相当ショックを受けたようです。

ーー「妊娠高血圧腎症」は母子ともに負担がかかる症状ですから、そのショックはかなりのものだったと思います。

その後ご主人からお手紙をもらったとの事ですが、どんな内容だったのか差し支えなければ教えていただけますか?

心配が故の手紙だったと思いますが、もらったときは「大事に思われてるんだな」とシンプルに思いました。

最後のページには「大丈夫」という文字が50回ほど書かれていて、ちょっと引いたりもしました(笑)

ちなみに手紙は5ページもありました!女子ですね(笑)

ーーその後、帝王切開での出産になったとの事ですが辛かった事は?

傷の痛みに苦労しました。

しかしそれよりも緊急事態宣言中で、10日間の面会禁止という入院生活がたまらなくストレスでした。

また血圧が高かった事から、朝の数値が高い日は一日中カーテンを閉めて、ベッドで過ごすように言われていたので気が狂いそうでした。

ーーコロナ禍での出産、入院は孤独との戦いと聞いた事があります。1人でじっと寝ているのも心細いですよね

血圧が高い事で入院7日目まで母子同室が叶わず、「我が子に申し訳ない」と一人泣いた夜もありました。

今となっては、もう少し預けて休んでても良かったのかな?と思います(笑)

産後の生活ペースは?

帝王切開での出産を経て、いよいよ赤ちゃんと我が家へ。
その時の生活ペースは、どんな様子だったのでしょうか?

ーー産後直後の旦那様のお仕事の状況はどんな感じでしたか?

通勤で2時間かかる学校へ赴任しています。

会議や指導案件がないときは、17時で帰宅してくれるのですが、定時で退勤しても自宅につくのが19時という通勤環境です。

クラブの顧問もしているので、休日や長期休みはほとんどクラブに行っていました。

お盆休みも関係なく平気でクラブに行くので、産後3ヶ月で息子を抱いて家出をしてしまいました(笑)

ーー通勤に2時間というのは、旦那さんもなべみさんもお辛いですよね。

そんな環境でも、家事や育児は分担されましたか?

私がご飯、授乳担当。

夫が風呂掃除、洗濯物、皿洗い、寝かしつけ担当です。

裁判員裁判を受ける事になった時の経緯や心境

産後の旦那様の通勤時間や勤務の状況はとっても大変そうですが、その中でも家事や育児を分担されているので、とても驚きました。

大変な育児生活の中、なべみさんはある機会に巡り逢われます。
ワンオペ育児に絡んだ事件を扱った、裁判員裁判です。

ーーまずは、どうして裁判員裁判を受けようと思ったのかをお聞きしたいです

同じ子をもつ母として、何かできる事があるのではないかと考え、裁判員裁判を受ける事にしました。

ーーどんな事件だったかを聞かせてください

事件の内容は、家庭や行政の協力を得る事ができず、夜通しワンオペ育児に追い詰められたお母さんが、自分の子どもを手にかけてしまうというものでした。

なべみさんが担当した裁判は、こちらです。

裁判員が見た「ワンオペ育児」殺害 母として教育者としての願い – 琉球新報デジタル|沖縄のニュース速報・情報サイト

当時ニュースなどでも話題になり、「ワンオペ育児」と家庭のあり方がとても注目されました。

ーーなべみさんにとっても同じワンオペ育児をしている中で、かなり衝撃的な内容だったと思いますが、実際にはどんな印象を受けましたか?

公判を通すと、ニュースを見ているだけでは分からないような家庭の実情がたくさんあった事を知りました。

また、支援の必要な子ども達をほぼ一人で見続ける事の大変さや、手を差し伸べてくれない行政への失望感などがひしひしと伝わってきました。

実際に裁判が進んでいく中でなべみさんが感じた事

公判を通してなべみさんが実際に感じられた事を、もう少し詳しくお話してもらいました。

ーー担当された事件については、どんな印象をお持ちでしたか?

この事件を知ったのはニュースなのですが、その時は「自分の子どもに手をかけるなんて」と友達と話をしていたほど衝撃的でした。

ーー同じ母親という立場で、事件を通して感じた事はありましたか?

どんな事があっても「やってはいけないラインがある」という思いは変わっていません。

ですが、当事者が追い詰められないように、100%一致するのは難しいですが…家族と育児の方針を合わせておく事も必要なんだなと思いました。また最後のセーフティネットとして、行政がしっかりと市民をサポートできる形を作っていく事も、大事な事だと感じました。

ーー裁判後ご自身の育児について、考え方が変わった事はありますか?

今までは自分が極限に来ている時に限り、夫にSOSを出していましたが、今は本当に些細な事…

例えば手足口病になった、風邪をひいたなどでSOSを出すようになりました。

裁判員裁判を受けた事でパートナーに変化は?

それだけ衝撃的な事件の裁判員裁判を受けたなべみさんですが、同じように旦那様にとっても衝撃的な内容だったと思います。

育児に対して、家庭に対して、多少なりとも旦那様にも変化があったのでしょうか?

ーーなべみさんが裁判員裁判を受ける事には賛成でしたか?

賛成でした。

ーー実際に裁判員裁判が始まる前に、事件に対して旦那様の当初の印象など聞いてらしたら教えてください

「なかなかパンチの効いた事件やな…しんどくならんようにな」、と言っていたと思います。

裁判を通してご夫婦のあり方や関係性、育児の方針などに影響は?

「パンチの効いた事件」、まさにその通りですよね。

全く違う家庭のワンオペ育児に関する事件の裁判を通して、なべみさん一家に変化はあったのかについてもうかがってみましょう。

ーー裁判後に、ご夫婦で話し合った事や実行した事はありましたか?

子どもは二人で育てるもの。

仕事も大事、付き合いも大事だけど困ったときは家族を一番に考えよう、という話をしました。

極論、仕事と付き合いは「自分にしかできない」という事はないので(笑)

ーーなべみさん自身、何か行動に移した事はありますか?

私自身は地元で、友達とサークルを立ち上げました。

0歳〜3歳くらいまでの動きたい、遊びたい盛りの子どもたちが対象の、親子広場を定期的に開いています。「お金が理由」で利用することを諦めることがないよう、これからも参加費無料で開催を続けるつもりです!このこだわりは、裁判員裁判の経験からきている事です!

ーーもっと詳細な旦那様の変化があったら、教えてください

これまでは私や息子が体調を崩した時には「一時預かりを…」「母に連絡する」と、謎の仕事第一主義、かつまるで他人事のような夫だったのですが、裁判後は積極的に自分の仕事を調整するようになりました。

「あれ?熱があるかも」というような些細な風邪を引いたときでも、早退するようにしてくれています。

これに関しては、協力的な職場にも感謝しています。

ーー他人事だった状態から自主的に行動してくれるよう、旦那様も少しずつ変わっていったという印象を受けます

妻がなんとかしてくれるだろう…という考えから、自分も「親」だという自覚がハッキリと出てきたのかな?と思います。

夫はこれまで「仕事は簡単に休めない」という先入観を持っていたようですが、管理職に話をすると「家族を大事に」と言ってくれた事がきっかけで、仕事へのハードルも下がったと言っていました。

職場の環境や管理職・同僚の理解もとても大切だと思います。

ご自身もワンオペ育児をしている中での裁判員裁判を通して、なべみさんが伝えたい事とは

担当された裁判員裁判の事件の内容が、偶然ワンオペ育児だった事によって、なべみさんのご家庭にも少しずつ変化があったようです。

そして今育児をしている方達に、なべみさんが伝えたい事はなんなのでしょう。

ーー同じくワンオペ育児をしている方に何かお話ししたい事は?

まずは…!普段ワンオペのママ・パパ、もうそれだけで素晴らしい事です!!
一日の中で幸せな事もあれば子どもにイライラする事、叫びたくなる事、しんどくなる事…

たくさんの感情が目まぐるしく出てくると思います。

そんな中、今夜も子どもがかわいい寝顔でスヤスヤ寝てくれているのは、ママ・パパのおかげです!
未来ある子ども達のために、毎日一所懸命子育てしてくれてありがとうと言いたい☆

ーー本当にそうですね、育児中はたった一日だけでも感情が目まぐるしく変わっていきます。
そんな中なべみさんがいろいろな経験を通して、育児中の親のあり方に思う事も教えてください

罪悪感・贖罪感もあるかもしれないけれど、自分の為にお金を使ってもいいんだよと伝えたいです!
美味しいものを食べる、買い物に行く…それだけでもホッとしますよね。

でも、もう一歩。
「自分だけの時間」を思い切り確保してほしい!

お住まいの自治体にある一時保育サービスなどを使って、2時間や3時間だけでもいいから自分がやりたい事をやってみてください^^

子どもは遊びの天才、順応の天才です。ママパパと離れるときは泣く事が多いですが、案外その後はケロっとしています(笑)

自分のご褒美にお金を使って心と身体の健康を保つ事も子育てへの投資に繋がると思います♪

ーー子どもも大事に、さらに自分も大事にする事で家庭も健康になるという事ですよね!

経済状況などで一時預かりや親子交流の機会が失われることがないよう、行政などももっと子育てサービスに予算をかけてほしいですよね。「無料で預かるよ!無料で遊びにおいでよ!」そんな場所が、沢山できればいいなと思います。

ーー最後に子育て中のパパ・ママにメッセージをお願いします

最後に…子育てはみんなでするもの!
「旦那さん(奥さん)、どれくらい手伝ってくれるん?」の、昭和・平成の時代はもう終わりました。
「〇〇してくれる」から「普通に〇〇してるよ」の時代に変えていきたい!
だから小さな事でもSOSを出して、相手と育児の考えのギャップを埋めてほしいと思います。

「令和の子育て」、どんどんイノベーションしていきましょう!

【インタビューを終えて】「令和の子育て」をイノベーションしていきたいという希望と野望を受け取りました!

ご自身のワンオペ育児の真っ只中に巡ってきた、同じくワンオペ育児が絡んだ事件の裁判員裁判は、なべみさん一家に大きな影響を与えました。

そのお話を伺った私も、またワンオペ育児をしている親の一人。

事件の内容も、そこからなべみさんが感じた事も、とても胸にささります。

そこからなべみさんが伝えたいという、「自分だけの時間」や心の健康を保つ事の大事さ、改めて深く考えさせられますよね。

罪悪感はあるかもしれないけど…追い詰められて追い詰められて、判断がつかなくなる前に、家族や自治体やお金を払ってもいいから自分を立て直す事の重要さ。

今回のお話から、今一度自分に関わる自由や健康についても振り返ってみるきっかけをもらえました。

なべみさん、勇気をもらえるインタビューをありがとうございました。

これからもご家族仲良く、楽しく過ごす事ができますように!

この記事のライター:ふじもとつるり

Webライター、エッセイストをしているアラフォーママです。 2020年に23歳の猫を天国に見送ってからは、7歳の女の子と夫の3人暮らし。 現在は小一の壁と、娘の学力向上のために奮闘中です。 里なし・ワンオペ育児の経験を活かして、いろんなコラム、エッセイ、インタビュー記事を綴っていきたいです!


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